47歳で奥歯を1本失ったとき、私が最初に頼ったのはGoogleマップの星の数でした。
ところが、星の多い医院で聞いた話と、別の医院で聞いた話はまるで違っていました。
「40代からの歯の治療ノート」を書いている中村です。
結論から言うと、良い歯医者かどうかは、口コミよりも初診の説明や見積もりの出し方で見たほうが外れにくいと思います。
患者の立場で確かめられる5つのポイントと、初診で聞くことをまとめました。
目次
口コミの星だけで歯医者を選ぶと迷う理由
星の数に出やすいのは、治療の中身より「待ち時間と接客」
口コミを何十件も読んでいると、書かれている内容に偏りがあることに気づきます。
多いのは「受付の対応が丁寧」「待ち時間が短い」「痛くなかった」といった感想です。
どれも大事ですが、治療そのものの出来とは別の話です。
被せ物がどれくらい長持ちするか、インプラントのまわりに炎症が起きないかは、数年たたないと分かりません。
治療を受けた直後の患者には、その良し悪しを判断する材料がほとんどないのです。
私が最初に行ったA医院も星4.5で、受付の感じは良かったのですが、カウンセリングでは「インプラント一択ですね」と言われただけでした。
口コミには「頼まれた星5」が混ざることもある
もう一つ気をつけたいのが、口コミそのものの信用度です。
消費者庁は2024年6月、東京都内の内科クリニックを運営する医療法人に、景品表示法に基づく措置命令を出しました。
インフルエンザワクチンを受けに来た人に、Googleマップで星5か星4を付けることを条件に接種費用を割り引くと伝えていたためです。
2023年10月に始まったステルスマーケティング規制で、初めての措置命令でした。
歯科の話ではありませんが、同じ仕組みはどの医療機関でも起こりえます。
厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、治療の内容や効果についての患者の体験談を医院の広告に載せることは認められていません。
患者が自分から書く口コミは広告に当たらない一方、医院が良い感想の投稿を頼めば規制の対象になります。
星の平均点がそのまま実力を表しているとは限らない、と頭の片隅に置いておくと冷静に読めます。
口コミより確かめやすい5つのチェックポイント
では何を見ればいいのか。
私が4軒でカウンセリングを受けて、あとから「ここを見ておけばよかった」と思った点を表にしました。
| チェックポイント | 確かめる場面 | 気をつけたいサイン |
|---|---|---|
| 1. 治療の選択肢とデメリットの説明 | カウンセリング | 最初から1つの治療しか示さない |
| 2. 見積もりの内訳と保証の条件 | 自費治療の提案時 | 口頭で総額だけ伝え、その日の契約を急がせる |
| 3. 検査の画像を見せてからの治療計画 | 初診から2回目 | 検査の前に削る・抜く話が進む |
| 4. 器具の滅菌などの感染対策 | 院内・ホームページ | 質問しても答えがあいまい |
| 5. 治療後のメンテナンスと通いやすさ | 治療計画の説明時 | 治療が終わったら終わり、という説明 |
チェック1・2:説明と見積もりの出し方を見る
チェック1 治療の選択肢を並べ、デメリットも話してくれるか
医療法の第1条の4には、歯科医師は適切な説明をして、患者の理解を得るよう努めなければならないという決まりがあります。
努力義務ではありますが、説明の丁寧さには、医院の姿勢がいちばんよく表れます。
A医院で「インプラント一択」と言われたあと、2軒目のB医院に行きました。
B医院ではインプラント、ブリッジ、部分入れ歯の3つを紙に並べ、費用と期間、それに「ブリッジなら両隣の健康な歯を削ることになる」といった欠点まで話してくれました。
同じ口の中を見ているのに、ここまで説明が違うのかと驚いたのを覚えています。
良い医院かどうかの目安になるのは、治療をしなかった場合にどうなるかまで話してくれるかどうかです。
メリットしか出てこない説明は、住宅の営業で良いことしか言わない担当者と同じで、少し身構えたくなります。
チェック2 見積もりは書面で、内訳と保証の条件まで読めるか
自費治療を勧められたら、見積もりは必ず書面でもらいましょう。
家のリフォームと同じで、総額だけでなく内訳を見ると、比べられるようになります。
書面でもらったら、次の項目が書かれているかを見てください。
- 検査・診断の費用
- 手術や処置の費用
- 被せ物など仕上げの費用
- 治療後のメンテナンス費用
- 追加でかかる可能性のある費用
- 保証の期間と、保証を受けるための条件
私が失敗しかけたのは最後の項目です。
「10年保証」の文字に安心して契約しかけたのですが、よく読むと、その医院で半年ごとに定期検診を受けていることが保証の条件でした。
保証は保険の約款と同じで、条件を読まないと意味がありません。
事前に下調べするなら、医院のホームページも役に立ちます。
医療広告ガイドラインでは、自由診療をウェブサイトで紹介する場合、標準的な費用や治療期間、主なリスクや副作用も書くことになっています。
自費治療のページに費用やリスクが見当たらない医院は、説明の姿勢も含めて確かめたほうが安心です。
チェック3・4:検査と衛生管理を見る
チェック3 検査の画像を見せてから治療計画を立てるか
治療計画は、レントゲンや歯周ポケットの検査、口の中の写真などを見たうえで立てるのが本来の順番です。
強い痛みがあって応急処置をする場合は別ですが、検査の結果を聞く前に大きく削る話や抜く話が進むなら、一度立ち止まってかまいません。
B医院では、モニターにレントゲン画像を映して「この部分の骨の高さが足りないので、インプラントなら骨を足す処置が必要になるかもしれません」と説明してくれました。
自分の目で画像を見ると、治療の必要性に納得がいきます。
検査の資料は、ほかの医院で意見を聞くときにも役に立ちます。
私の場合は、資料をお借りできるか聞いたところ、快く応じてもらえました。
医院によって対応は違うので、まずは相談してみてください。
チェック4 器具の滅菌など、感染対策が見えるか
歯を削る器具(ハンドピース)は、口の中に直接入るものです。
厚生労働省の委託事業でまとめられた一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針(第2版)では、使ったハンドピースを患者ごとに交換し、高圧蒸気で滅菌する方法が強く勧められています。
2018年度の診療報酬改定からは、院内感染対策の基準を満たして届け出ることが、初診料の算定と結びつくようになりました。
届け出た医院は院内に掲示を出していて、2024年度の改定からは、こうした掲示事項を原則としてホームページにも載せることになっています。
待合室の掲示やホームページの「施設基準」のページを一度見ておくと、安心材料になります。
患者の目で分かることもあります。
個別に包まれた器具を目の前で開けてくれるか、スタッフが患者ごとに手袋を替えているかは、診療台に座っていれば見えます。
気になれば「器具は患者さんごとに滅菌していますか」と聞いても失礼にはなりません。
すぐに具体的な答えが返ってくる医院は、日ごろから取り組んでいるのだと思います。
チェック5:治療が終わったあとまで考えてくれるか
メンテナンスの話が最初の計画に入っているか
インプラントも被せ物も、入れたら終わりではありません。
長く使えるかどうかは、治療後の手入れと定期的なチェックにかかっています。
良い医院は、治療計画の説明のときに「終わったあとは何か月ごとに来てください」と、メンテナンスまで含めて話してくれます。
歯科衛生士による定期的なクリーニングの体制があるかも、あわせて聞いておくと安心です。
私の場合は、インプラントを入れたあと3か月ごとの通院を勧められ、今もそのペースで通っています。
仕事をしながら通い続けられるか
意外と見落としがちなのが、通いやすさです。
大人の矯正をしたときは2年ほど月1回の通院が続き、会社帰りに寄れるかどうかが本当に大事でした。
平日の夜や土日に診療しているか、職場か自宅の最寄り駅から通えるかは、治療の質とは別の話に見えて、実は結果を左右します。
予約が取りにくくて間が空くと、治療期間が延びたり、メンテナンスが途切れたりするからです。
私が住む大阪でも、土日に開いている医院を沿線で探す人は多いと感じます。
口コミの代わりに使える調べ方と、初診で聞くこと
公的な情報で裏を取る
候補の医院を探す段階では、厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」が使えます。
2024年4月に始まった全国共通の検索サービスで、名前で検索すれば見つかります。
歯科診療所も、診療日や対応できる治療内容から探せます。
歯周病の治療や矯正など、特定の分野で医院を選びたいなら、専門医がいるかも参考になります。
日本歯科専門医機構では、口腔外科、歯周病、小児歯科、歯科麻酔、歯科放射線、補綴歯科、矯正歯科、歯科保存の8分野について、専門医と研修施設の一覧を公開しています。
ただ、専門医がいない医院の中にも丁寧な医院はあるので、ここは判断材料の一つと考えてください。
初診で聞いておきたい質問リスト
カウンセリングでは緊張して、聞きたいことを忘れがちです。
私はスマートフォンのメモに次の質問を入れて持っていくようにしていました。
- ほかにどんな治療の選択肢がありますか
- それぞれのデメリットと、治療しなかった場合はどうなりますか
- 費用の内訳と、追加でかかる可能性のある費用を教えてください
- 保証の期間と条件を書面でいただけますか
- 検査の画像を見せていただけますか
- 治療が終わったあとは、どのくらいの間隔で通えばいいですか
質問したときの反応も、立派な判断材料です。
嫌な顔をせず、一つずつ答えてくれる医院なら、治療中に不安が出てきたときも相談しやすいはずです。
口コミは低評価の「中身」だけ拾い読みする
とはいえ、口コミを全く見ないのももったいない話です。
私がおすすめしたいのは、星の平均ではなく、低評価の口コミに何が書かれているかを読む方法です。
「予約が取れない」「説明なしに削られた」「会計で聞いていない金額を請求された」といった具体的な不満が何件も続いていれば、参考になります。
反対に「受付の言い方がきつかった」程度なら、相性の問題かもしれません。
口コミは候補を絞るためのもので、最後は自分で話を聞いて決める、という順番がいいと思います。
まとめ
良い歯医者を見分けるには、口コミの星の数よりも、次の5つを初診で確かめるのが近道です。
- 治療の選択肢を複数示し、デメリットも話してくれるか
- 見積もりを書面で出し、内訳と保証の条件が読めるか
- 検査の画像を見せてから治療計画を立てるか
- 器具の滅菌など、感染対策が見えるか
- メンテナンスまで考え、通い続けられる医院か
私は歯科医療の専門家ではなく、ここに書いたのは患者として4軒を回った経験と、公的機関の情報をもとにした考えです。
私の場合はB医院の説明に納得できて治療を決めましたが、合う医院は人によって違います。
迷ったら2軒目に行っていい、というのが私の考えです。
1軒で決めず、説明が納得できる医院を選んでください。